ツーリング日記

MT-09はだけはやめておけ

MT-09で最南端へ

世間はコロナで大変な有様であった。
正確には2021年8月27日の夏。
大型二輪の免許取り立ての私はコロナという息苦しさと仕事の忙しさに「遠くへ行きたい」と常日頃から思うようになっていた。

既にその頃には我が相棒ヤマハMT-09(2014)は手元にあったし、日帰りツーリングにこそ行っていたが物足りなさを感じていた。

思いっきり遠くへ行きたい。1泊2日で…!

こんな無茶な考えを持つようにになる。長々と書いているが要はツーリング行って飯食って温泉入ってだらだら観光したかった。身も蓋もない。

仕事は限界に近かった。
体力も気力も精神面でもきつかった。
愛社精神もクソもないので「南へ行きます」とだけ伝えて休暇を取った。
これで一応の予定は組めるようになった。

MT-09で遠くへ行こう。それが旅の趣旨ではあるけれど、遠くへ行き過ぎても帰りがめんどくさいので近場かつ疲れもあまり残らず程よい遠さを求めた結果、和歌山の那智勝浦町へマグロを食って温泉宿に泊まって帰る。これが旅の目的となった。

だが、これだけではつまらないのでサブクエストも考えた。那智勝浦町にはマグロの無人販売所があるらしく、ここでマグロを買って家族に持ち帰り媚びを売るクエストだ。
そのためにバイクには冷房バッグも用意してから出発した。

だが、そのころ手頃なバイクに詰めるリュックが無かったため、無計画な私は100Lの登山リュックで出発した。これが後に地獄をみることになるとは知らずにルンルンで向かった。

高速道路でリュックがくそ重い事に気づくまでにはそう時間はかからなかった。
「え? このくそ重いリュック持って一日中バイク乗るんかワシ?」
しかし、場所は既に高速道路で逃げ場は無かった。

2時間ほどバイクを走らせ最初の目的地は和歌山県白浜町。
冒頭にも書いたが夏である。さらに言えば白浜町は出発地の奈良より遥かに暑い。半ば脱水症状を起こしながら白浜町のとれとれ市場にて休憩。

空が青い。暑い。日差しがきつい。
しかし、故郷は既に遠く温泉宿のキャンセル料を払う気はサラサラ無かった。
このまま那智勝浦町へマグロ丼を食べに乗り込むのも悪くないが、それよりもバイク乗りとして行きたいところがあった。
潮岬である。
和歌山県の潮岬というのは本州最南端の地である。
潮岬へ行ってこそ一端の関西住みバイク乗りと言えるのではなかろうか。
しかしリュックは重い。だが、行く価値はある。
急遽、那智勝浦町から潮岬へと進路を変えた。まぁ、道半ばにあるんですけどね。

駐車料金と入場料がかかると知って颯爽と近くの公園へ移動。
そこからでも景色は綺麗に見えた。
10分ほど海風に当たっていると自分のバイクの写真を撮っていないことに気づいた。
最近はGoogleのおかげで写真の整理がしやすい世の中になった。
文明の利器にだけは取り残されたくないものだ。

さて、温泉宿まではまだまだ遠い。
海沿いの気持ちの良い道を走りながら次に目指すは太地町。
くじらの博物館である。
くじらの博物館は実物大のくじらのペニスが展示されていることで個人的に有名な場所だ。是非ともひと目拝みたい。
潮岬から太地町の道の駅にて、休憩。走り通しだったのでアイスコーヒーが美味しい。

くじらの博物館へ

そこからすぐ近くのくじらの博物館へ到着。看板からしてデカい。
でかいものは好きだ。
人は古来より大きいものに憧れる。
ウェイトトレーニーがボディビルダーに憧れるのはその大きさにあると思う。
いざ、すでに拷問器具と化しているリュックを下ろし、くじらの博物館へと乗り込んだ。

博物館周辺をバイクで走り、那智勝浦の温泉宿へ到着。
ご飯

温泉宿で英気を養いながら思うは仕事のことだ。
今の職場は正直嫌気が指している。
しかし、給料は良い。それのみだ。
そのためだけに生きるのはなにか違う気がすると夕食を食べながら思い始めていた。
そうなると早々に帰りたくなった。荷物をまとめて朝には出ることにする。
お土産も買ってやりたかった。

温泉宿を朝早く出発し、向かうはマグロの無人販売所。
裏手にバイクを停めて販売所へ行く。
無人販売所というが店員さんがいた。
接客はあまりしていないようだ。代金は箱に入れることになっている。
冷凍庫を開けるとマグロの数が少ない。
後に知ることとなるがマグロのシーズンはもう少し後らしい。
とりあえず、買えるだけ買って家路を急ぐことにした。

帰宅方法は2つあった。
もう一度同じ道を通るか、十津川村を抜けて下道で帰るかのどっちかだ。
同じ道では高速料金がかかると思ったし、違う道も楽しそうと思い十津川村ルートを選択した。

問題は燃料タンクがMT-09は小さいくらいだが、なんとかなるだろうと見切り発車で出発した。

カーブ地獄

 

問題はここで起こる。
十津川村ルートはカーブの多い山道なので登山リュックが超拷問器具へと早代わり。
左右に車体を振るたびに激痛がした。なにせ氷とマグロと荷物が重いし、登山リュック自体も重かった。
激痛に耐えながら2時間半近くかけて十津川村コースを制覇。
休憩所なんぞありもしない。
疲れれば路肩に寄せて座り込むのみだ。それでもなんとか家の近くまで帰ってこれた。
残り一時間ほどで帰れる。
行きはあんなに楽しいのに帰りはなぜにこのように辛いのか。バイク乗りが馬鹿と言われる所以だろう。どう考えても車のほうが楽だ。
それでもバイクに乗ってしまう。

帰り道、ミニ事件が起こる。
登山リュックがあまりに重いのと、暑さと脱水状態でふらふらしていると、前のご高齢の老人夫婦の乗る車にあおり運転と思われたらしい。
いきなり前の車が路肩に停めて怒鳴ってきた。
「はいはい、どーもー」とすり抜けてフラフラ先を急がせてもらう。
違うんだ爺さん。登山リュックがバカみたいに重いんだ。

残り30分県内で水分補給。
あっという間にボトルが空になった。
氷もかなり溶けている。まずい。体にムチを打って家路を急いだ。

MT-09は初心者向けじゃない

本来、わたしはバイクはNC750を買いに行ったのだが、09に一目惚れし、オーナーになった。
どう考えてもNCにしておけばよかった。
それくらいじゃじゃ馬なのだ。
まぁ、今であればからだの吊り防止に芍薬甘草湯という漢方薬を飲むとかそういった工夫は出来たのだろうけど、当時は無知だった。
結局MT09は売ってしまった。つくづく無念だ。
もっと大切にしてやればよかった。と後悔しかないが、自分には重たすぎたバイクだったのだろう。色々と。
次はちゃんと考えてから買います。